うんこの話

2010年11月1日 日常
今日の朝のことであった。いつも通り登校した猿缶少年。ふと便意を覚える。
僕はもともと胃腸の弱いほうで、通学途中に腹痛を引き起こすこともしょっちゅうあり、このこと自体は珍しいことではなく、むしろ確実にトイレがある場所で催してラッキーとさえ思っていた。

というわけでトイレに直行。学校の個室トイレは和式が二つに洋式が二つ。洋式が一つ埋まっており、もう一つの洋式トイレに入った。もちろん紙があることの確認は怠らない。

排泄行為自体は何事もなく終わった。ただ、少し水っぽく、ふき取るのに少々手間がかかるかと思ったぐらいである。そのままトイレットペーパーホルダーに手を伸ばし一定量の紙を取ろうとする。すると、


カランッ


どうやら紙はあるにはあったが、その残量まで頭が回らなかったようだ。予備のものがないか辺りを見回す。が、

無い。

ざわ・・
   ざわ・・

バカなっ・・・こんなことがっ・・・ありえない・・・っ!!

以前登校途中の駅で同じような状況に遭遇したことがある。そのときは泣く泣くレポート用紙を使用した。
しかし、カバンは今教室に有る。学校で催したことがかえって悪い結果となった。つまり、今手元に紙は無い。いや、あるにはある。芯だ。しかし硬度がトイレットペーパーのそれとは比べ物にならないほど硬い。これではそもそもふき取れないだろうし、尻にダメージを負う可能性がある。論外だ。

状況を整理しよう。個室は他に3つある。一つは使用中だ。そいつに助けを求めるか?いや、さすがに恥ずかしすぎる。

ならばとるべき方法は一つ。他の個室からトイレットペーパーを回収するのだ。

もちろんこの方法には強烈なリスクを伴う。下半身丸出しの状態で個室から出るのだ。
リストカット     スクールエスケーパー 
この姿を目撃されたら一本いってからの不 登 校 へ一直線だ。これだけは絶対に避けなければならない。

とりあえずドアを開き、向かいの個室を確認する。
紙はあるにはあるが、予備が無いようだ。ホルダーからとる時間を考えるとなるべく予備のものをかっさらっていきたい。

ならば自分の位置からは死角になる個室に行くしかない。距離は1メートルと少しくらいだろうか。大股で行けば一歩でいける距離。だが、今の僕には万里の長城よりも長く思えた。

呼吸を整え、パンツを完全に脱ぎ、いざ出陣!!



といこうとしたところで近くから物音が。

危なかった。隣に人が入っているのを忘れていた。コイツが出てから行動に移ろう。


水を流す音、ズボンを履く音、個室の鍵を開ける音、そして手を洗う音を十分に確認したところで再び勇気を振り絞り、その一歩を踏み出す!

が、この一歩が踏み出せない。さっきの物音に気づかなかったらどうなっていたのだろうかという失敗のヴィジョンが頭から消えない。

時が過ぎる。失敗は恐ろしいが、このままトイレに引きこもってベルフェゴールと仲良しさんになるのも如何なものだろうか。

意を決し、個室を飛び出す。


「超能力が一つだけ使えるなら何がいい?」という質問に対し、そのときの僕なら間違いなく「時を止める能力」を選ぶだろう。
僕はもともとこの能力は使えたとしてもあまり使いたくは無いなと思っていた。周りの時が止まっている中自分だけが動けるということは自分だけが速く老いていくということであり、吸血鬼でもない限り連発できる能力ではないと思っていたからだ。
だが、今はそんなことは関係ない。ただ、この数秒の間を自由に動けたら。それだけを思っていた。


足を大きく踏み出す。と同時に個室の中を確認する。ある。予備の紙がある。
最初の一歩の勢いそのままに紙を取り。踵を返してもとの個室へ戻る。

わずか数秒の出来事。だけど僕には永遠の時に感じた。

個室に戻って鍵を閉めた僕の手に握られているのはまだおろしたばかりのトイレットペーパー。

勝った。僕は戦いに勝ったのだ。

嗚呼、勝利の味とはこれほど甘美なものなのだろうか。これが勝利、成功という奴なのか。



この快感はなかなかに抜け出せそうに無かった。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索