俺の名前は新宮シゲル。私立雨流歩高校に通う普通の高校2年生。みんなからはぐーしーと呼ばれている。そんな俺の趣味はマジック・ザ・ギャザリングというカードゲームで、放課後に仲間と遊ぶのがもはや日課となっている。

( ぐωし)「うーっす」

(;ぐωし)「何この顔文字。無茶があるんだけど」

( ’A`)「仕方があるまい。名前ありきで始められた物語なのだから」

 コイツの名前は鬱田ドクオ。俺のMTG仲間の一人である。

(;ぐωし)「何じゃそりゃ。まぁいい。始めんべ」

( ’A`)「おうよ。俺の殻ケッシグソーラーフレアハートレスデッキが火を噴くぜ!」

(;ぐωし)「何その名前だけ思いついて後から内容考えたみたいなデッキは」

( ’A`)「ふっふっふ。溢れ出すファッティの波に溺れるがよい!」

…………

………

……



( ’A`)「掘葬の儀式でシェオル釣ってエンド」

( ぐωし)「ぐぬぬ……対処手段が無いな……エンド」

( ’A`)「アップキープにノーン釣ってパンチ」

( ぐωし)「あっ死んだ」

(*’A`)「フハハ!見たか殻ケッシグソーラーフレアハートレスデッキの力を!殻ケッシグソーラーフレアハートレスデッキなら世界を目指せる!俺は殻ケッシグソーラーフレアハートレスデッキと共にこの環境を駆け抜けるぜ!」

( ぐωし)「お前殻ケッシグソーラーフレアハートレスデッキって言いたいだけだろ」

( ’A`)「うん」

(;ぐωし)「やけに素直だなおい!」

( ’A`)「時にぐーしーよ。提案があるのだが」

( ぐωし)「おう、今度は何だ?」


 鬱田はどこから着想を得たのか、そしてどこに勝算を見出したのかしょっちゅう妙なルールを交えたゲームを提案してくる。『早食いMTG』やら『たたいてかぶってMTG』だとか。大体はグダグダになって終わるのだが。今度はどんな電波を着信したのやら……

( ’A`)「チェスボクシングって知ってるか?」

( ぐωし)「何それ」

( ’A`)「1ラウンド毎にチェスとボクシングを交互にやって、チェックメイトかKOしたら勝ちというスポーツだ。俺はコレが……」

( ぐωし)「ちょっと待て何だその考案者の正気を疑うようなスポーツは。っていうかスポーツなのかそれ?」

( ’A`)「何を言うか。ちゃんと協会も存在するし世界大会も開かれているんだぞ」

( ぐωし)「マジかよ……それよりも嫌な予感しかしないのだが」

( ’A`)「嫌な予感とはご挨拶だな。俺はこのチェスボクシングをMTGに応用できるんじゃないかと思ったんだ。知能競技と格闘技の融合という点では同一だからな。超!エキサイティング!なゲームになること請け合いだぞ」

 うわー。大丈夫なのか?俺達ボクシング素人だぞ?ボクシング部分でグダグダになる未来しか見えないんだが。

( ’A`)「心配ご無用!俺はこの日のためにボクシング部で訓練を積んできた!」

(;ぐωし)「地の文を読むな!それよりも用具とか場所とかは用意してるのか?」

( ’A`)「笑止!すでにボクシング部と交渉済みだ!」

(;ぐωし)「やけに準備いいなオイ!こういう用意周到さがお前のいいところだよ!そして厄介なところだよ!」


 まずいな。適当に理由つけて企画倒れにしようと思ったんだが。こういう時の鬱田は妙に頑固だ。嫌がっても一向に引こうとはしない。

(;ぐωし)「仕方ないか……まぁ一回くらいならやってやってもいいか」

(*’A`)「わぁいさすがぐーしー。やっさしー」



~ボクシング部部室~

[ ’A`]「というわけで奇数ラウンドはMTGを5分間、偶数ラウンドはボクシングを2分間やる。どちらかで決着がつくまで続けるぞ。いいな」

[ ぐωし]「ちょっと待て。いつから俺達こんなに角ばった輪郭になった」

[ ’A`]「ヘッドギアを表現しようと思ったらこうなった」

[ ぐωし]「いいんだよこういう細かいところは。内容を充実させろ内容を」

[ ’A`]「誰に向かって話しかけてるんだ?まぁいい。最初はMTG5分間。いくぞ!」

第一ラウンド MTG

カーーーーーーーン

[ ぐωし]「(まぁ普通にやるだけか)セットランドでエンド」

[ ’A`]「アンタップアップキープドロー。セットランドでエンド」

[ ぐωし]「セットランドでエンド」

[ ’A`]「セットランド。ランパンしてエンド」


 お互い目立ったアクションも無く第一ラウンド終了。

第二ラウンド ボクシング

カーーーーーーーン

[ ’A`]「よっしゃいくぜぇっ!」

[;ぐωし]「うおっ!?」

 『ボクシング部に行って訓練してきた』と言ってきた通り鬱田の動きは様になっていた。コイツこのためだけに練習してきたの?暇なんだな。

[ ’A`]。=○「オラオラどうした?守ってばかりじゃ勝てないぜ?」

[;ぐωし]「……」

 鬱田は華麗にパンチを連打してくるが彼の体型は長身で痩身。対して俺は中肉中背。正直威力があまり無い。ガードをしっかり固めていれば倒れることはないだろう。


カーーーーーン

[ ’A`]「フッ。ゴングに助けられたな。次のボクシングラウンドでは覚悟してろよ」

[;ぐωし]「……」


第三ラウンド MTG

[ ’A`]「セットランド。緑タイタンプレイ」

[ ぐωし]「雲散霧消」

[ ’A`]「まぁ持ってるよな。エンド」

[ ぐωし]「(普通のケッシグじゃねぇか。殻ケッシグソーラーフレアハートレスデッキはどうしたんだよ)エンドに熟慮フラッシュバック。ターン入ってセットランドでエンド」

[ ’A`]「高原の狩りの達人出してエンド」

[ ぐωし]「エンドに錬金術フラッシュバック。ターン入って黒頂点X=2」

[ ’A`]「ぬぅ……」

……



カーーーーーン

第四ラウンド ボクシング

[ ’A`]。=○「フンフンフンフンフンフンフンフンフン!」

[;ぐωし]「それはバスケだろ!」

[ ’A`]。=○「まっくのっうち!まっくのっうち!」

[;ぐωし]「お前にデンプシーロールは無理だ!」

 第二ラウンドと同様に鬱田は元気にパンチを繰り出してくる。大丈夫か?スタミナ持つか?


[;’A`]「ゼェ……ゼェ……」


 ダメでしたー!案の定疲れ果ててますこの人ー!

[ ぐωし]。=○「今が好機!今度はこちらから攻めるぞ!」

[;’A`]「むぅ……しかし、甘いぞ小僧!」

((([ ’A`])))「貴様にこの動きが見切れるかぁっ!?」

[;ぐωし]「!?」

 コイツ、体を大きく左右に振って俺のパンチを避けているだと!?クソッ、さっきのは疲れている演技だったのか!?

[;’A`]「ゼェ……ゼェ……もう……ムリ」

 何がしたかったんだコイツ。

[ ぐωし]。=○「よっしゃこのラウンドで決めたるでぇ!」

カーーーーーン

 俺が一気に攻めようとしたところでゴングが鳴った。運のいいやつめ。アレ?結構このゲーム楽しんでるんじゃね俺?

第五ラウンド MTG

[;’A`]「ゼェ……アンタップ…アップキープ…ドロー……エンド」

[;ぐωし]「ハァ…ハァ…アンタップアップキープドロー。土地置いてエンド」

 なんやかんや言って俺の方にも疲労が蓄積してきた。だって俺ボクシングなんてやったことない文系男子だもん。作者に経験がないから本当はどのくらい疲れるのか知らないけど。なんにせよそろそろ決着をつけねば。主にMTGの方で。ボクシングはお互い疲れ果てているから決定打が出ない。

[;’A`]「アンタップアップキープドロー。……クソッ、何も引きゃしねぇ。エンド」

[;ぐωし]「アンタップアップキープドロー。セットランド。黒タイタン出してエンド」

[;’A`]「ぐぬぬ……アンタップアップキープドロー。高原の狩りの達人でエンド」

[;ぐωし]「アンタップアップキープドロー。黒タイタンでアタック」

[;’A`]「タイタンとトークンブロック。ライフ残り20ね」

[;ぐωし]「エンド」

[;’A`]「ドロー。土地かよ……エンド」

[;ぐωし]「エンドに青頂点X=6」

[;’A`]

[’A`]

カーーーーーン

第六ラウンド ボクシング

[#’A`]。=○「うおっっしゃぁああぁああ!!」

[;ぐωし]「MTGで敗色濃厚になったからボクシングで勝ちに来た!露骨!」

 残る体力を振り絞ってボクシングで仕留めに来た鬱田。しかし先程のようにしっかりとガードを固めれば倒れることはない。

[#’A`]「クソッ、相手のガードが下がらねぇ!一体どうしたら……」

      「バカヤロウッ!」

[;’A`]「!?」

[;ぐωし]「!?」

( ●д゚)「バカヤロウ!教えたことをもう忘れちまったってのかい!?」

[;’A`]「教えてもらったこと……?」


~回想~


( ●д゚)「なぁお前さんよ。人間をぶっ倒すにはどこを叩けばいいと思う?」

( ’A`)「頭、でしょうか?」

( ●д゚)「その通りだ。そしてそのことは相手もわかっている。当然頭をガードしてくる。ガードしてくるところに打ち込んでも大したダメージは見込めない。ところが人間の体ってのはそう完璧にはできてなくて、頭をガードしていたら他の部分、特に胴のあたりが無防備になる。そこでだ。最初は体にパンチを集中させるんだ。胴体も殴られれば痛いからな。次第に体をガードするようになる。人間誰だって痛いのは嫌だ。本能で体を守っちまうのさ。そうして頭のガードが疎かになったところに一発ガツンと入れてやればいいのさ」

( ’A`)「なるほど!わかりました!」

( ●д゚)「よし、そうと決まりゃ練習だ!上下の打ち分けを意識するんだ!」


~回想終わり~

[;’A`]「そうだ!まずは胴体を中心に攻める!そうしてガードが下がったところに一発デカいのを入れるんだ!」

[;ぐωし]「くっ……」

 突如鬱田は胴体を中心に狙い始めた。いくら軽いパンチといえどこうも重ねられると……


カーーーーーン

( ●д゚)「いいぞ!ダメージは着実に蓄積されている!次からも地道に攻めていけ!」

[;ぐωし]「(誰だろうあの人)」

[;’A`]「はい!わかりました!(誰だろうこの人)」


カーーーーーン!

第七ラウンド MTG

[ ぐωし]「じゃあ全軍でアタック」

ヽ[ ’A`]ノ「負ーけたー」


( ●д;)「くそう……俺の力が足りないばかりに……すまなかった」トボトボ


( ぐωし)「ふぅ。やたら疲れたな」

( ’A`)「なぁ、聞きたいことがあるんだが、いいか?」

( ぐωし)「ん?なんだ?」





 ‐‐これ、明日からもやる?

 ‐‐やだ。

 ‐‐ですよねー。





続かない。

コメント

パリジェンヌ田吾作。
2012年3月1日16:51

第2話はよ。

猿缶
2012年3月1日17:01

第2話発表の予定は未定にございます。

シグ
2012年3月1日17:25

一話が長いと思ったら、読みきりだった…

>ひ
黒幕はあいつか…

猿缶
2012年3月1日17:32

ネタを思いつき次第続きも書きますけどね。

この小説。黒幕に対する敬意もしっかり払われておりますw

荒@新宿勢
2012年3月1日20:05

囲い込みじゃ!第2話はよ

猿缶
2012年3月1日20:13

第2話発表の予定は未定にございます。

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